「心」ってどこにあるのでしょうか。「心臓」?,それとも「脳」?。どちらか一方かもしれないし,そうでないかもしれない。ただ,体と一緒に動いていることは確かなのです。それは,「心」が「体」の調子にも影響を与えるし,逆に体調は,私たちの「心」に反映することがあるからです。いわゆる「心身一体」です。  「心と体」が関係する場面はいろいろあります。最も直接的な場面は,体調の善し悪しと気分の関係です。また,現代はストレス社会です。私たちをとりまく環境によっては,ストレスからくる精神的不安や体の不調を訴える人が増えていますが,それをスポーツなどによって解消し,心身ともにリフレッシュすることもできます。
 さらに,そのスポーツの世界でも「心と体」が関係する場面があります。たとえば,スポーツの技術面 の向上には,選手の精神面の強化が深く関わっています。いわゆるメンタルトレーニングです。もう一つ例をあげると,障害者スポーツです。障害を持つ人を援助することはとてもよいことです。それは自分自身の心の健康増進にもつながるからです。しかし一方で,ハンディを抱えながらも自立のための努力をし,スポーツによって自分の可能性を引き出そうとしている人もいます。まさにヘルスプロモーションの実践といえるでしょう。
 1986年,WHO(世界保健機関)は「ヘルスプロモーションに関するオタワ憲章」を提唱し,その中で,「ヘルスプロモーションとは,人々が自らの健康をコントロールし,改善することができるようにするプロセスである」と定義しています。これにより,「健康」はこれまでよりもずっと積極的な意味をもつようになり,この考え方は,世界各国で受け入れられるようになりました。ひとりひとりが健康増進のための行動をおこすこと,それを社会全体が支えていくことが,ヘルスプロモーションの理念です。  2003年4月から始まる新しい教育課程で,数多くの高校生の皆さんに「心と体」の密接なつながり,ヘルスプロモーションの意味というものを理解していただきたく,高校の「保健体育」の編纂に取り組んでいます。
(編集部 「保健体育」担当 某著)