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《食のアンチテーゼ》 |
食には心があります。Y.Matsumoto氏がそれを強く感じたのは、水上勉著『土を喰ふ日々』(文化出版局)を読んでから。食の精神性・本質に迫る内容で、食に対する考え方を根本から変えてしまった1冊です。感謝の気持ち・食の原点を忘れないためにも、Y.Matsumoto氏は本にのっていた「五観の偈(ごかんのげ)」をコピーし、システム手帳の中に入れて常に傍らにおいています。 |
また、食べるという行為の本性をさらけ出した、辺見庸著『もの食う人々』(角川文庫)も、生存するための“食べる”という意味を考えさせられた一冊です。ある意味、先述の『土を喰ふ日々』の対極に位置する本で、Y.Matsumoto氏はこの本から大きなカルチャーショックを受けました。両著者にお叱りを受けるかも知れませんが、Y.Matsumoto氏は、この二冊は両極に位置すると思う反面、何か共通性があるのではないかという気がして仕方がないのです。 |
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〈水上勉氏による解釈〉 |
一、 |
この食べ物を料理した人たちの苦労を思い、その食をいただけるありがたさを先ず感謝せねばならぬ。それに、この食物がいま、自分の口にいたるまで、いろいろな人の世話になり、手数もかかっているのだから、一粒の米も無駄にできぬ。 |
二、 |
こんなありがたい食物を受ける資格があるだろうか、と常にこれをかえりみて、心を正さねばならぬ。 |
三、 |
修行とは心の汚れをきよめることだ。仏のいう貪(どん)・瞋(じん)・癡(ち)の三毒をはらいのけることだろう。この三つの中で、いちばんわるい心は物をむさぼり喰うことだ。そのむさぼる心を克服するために、いま、この食事をいただくのである。 |
四、 |
この躯を保持するために、よいクスリと思うて頂戴せよ。 |
五、 |
仏と同じ悟りをひらく、そんな境地に達するためにも、この食物をいただくのである。 |
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