ひな人形といえば、豪華な衣裳をまとった精巧な人形を思い浮かべますが、もともとは紙や土で作った素朴な人形でした。しかも現在のように雛壇に並べて飾るのではなく、心身の穢れを移して川などに流す身代わりとして作られていました。つまり、ひな祭りの原型は、厄災を人形に託して流すという厄払いの行事なのです。
この風習は、もともと中国で上巳*のころ行われていた行事が、日本古来よりの禊ぎの思想と結びついて成立したものだとされています。まず平安朝の貴族に受け入れられ、「曲水の宴」として宮中行事に取り入れられました。のち、美しいひな人形飾りとして武家社会へと広がり、江戸時代になって庶民の行事となったのです。
時代とともにひな人形を川へと流す伝統的な「ひな流し」を行う地方は少なくなりましたが、広島県大竹市の小瀬川流域では、今でも江戸時代より伝わる昔ながらの「ひな流し」が行われています。 |